夫婦が離婚した場合、婚姻中に築いた財産を清算するため、その分与を求めることができます。
これを財産分与といいます。
財産分与について、当事者間の話し合いで合意できない場合、家庭裁判所が、離婚裁判や財産分与審判の中で
取り決めます。
財産分与は離婚後でも請求できますが、離婚後2年以内にする必要があり、
この期間を過ぎると請求できなくなります。
財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻中にその協力によって取得した財産です。
代表的なものは、結婚後の給料収入等で購入しまたはローンを支払った自宅不動産や自動車、
結婚後に蓄えた預貯金や株式、保険等金融資産等です。
将来の夫、妻いずれの名義からは問いません。
財産分与の対象となる財産を夫婦共有財産といいます。
夫婦の一方が婚姻前から保有していた財産、婚姻後であってもその親族からの贈与や相続などによって
取得した財産は、夫婦の一方が名実ともに単独で有する財産であり、財産分与の対象になりません。
なぜなら、これらの財産は、夫婦の協力により取得されたものではないからです。これらを特有財産といいます。
また、夫婦の合意によって、その名義の財産を特有財産と扱うことも可能です。これを専有財産といいます。
夫婦の一方が結婚前に取得した財産でもローンを結婚後に支払っている場合、
結婚後の支払った割合は実質的に夫婦共有財産と扱うことになります。
特有財産かどうか当事者間で争いがある場合は、特有財産と主張する側が預金通帳等の証拠により
証明する必要があります。この証明ができない場合は、夫婦共有財産と扱われることになります。
住宅ローン等の債務については、金融機関等債権者との関係では、契約により債務を負担した者が
離婚後も返済義務を負うことになり、債務自体は財産分与の対象にはなりません。
ただし、自宅不動産の住宅ローンなど資産形成のために負担した債務については、
対象となる自宅不動産等の資産を財産分与の中で考慮されます。
考慮の仕方としては、対象となる
不動産の価格からローン残高を控除した余剰部分を財産分与の対象とするのが一般的です。
また、生活費の不足のための借入や教育ローンについても、財産分与の中で考慮されることになります。
財産分与の割合は、基本的には、夫婦で2分の1ずつとする傾向があります。
これは夫婦が共働きの場合でも、専業主婦の場合でも基本的には同じです。
2分の1ルールの例外として、形成された財産が非常に多く、夫婦の一方の特別な資格や能力により高収入が得られ、この固有の能力に基づいて財産形成された部分が大きい場合は、夫婦の寄与割合を変更することがあります。
具体的には、開業医、スポーツ選手、芸術家などでかつ多額の財産を形成したような場合が挙げられます。
財産分与は、対象となる夫婦共有財産を2分の1ずつするのが原則ですが、
裁判所が、次のような各事情も考慮して、決めることができます。
依頼者は50代パート社員、夫は50代会社員。
夫との離婚調停で、夫は、今ある預金は夫の給料で貯めたもので、パートで給料が少なかった妻(依頼者)
の貢献は少ないから、妻の財産分与は2分の1より少なくすべきだと主張しましたが、
最終的には、依頼者が預金の2分の1相当の1,000万円を取得できました。
妻が専業主婦であっても財産分与の割合は原則2分の1ずつです。
しかし、妻が専業主婦やパート社員の場合、夫が、夫婦の財産形成に対する妻の貢献が少ないと主張して
正当な財産分与を拒むケースは少なくありません。このような場合は、是非、当事務所にご相談ください。
依頼者は40代会社員女性、夫は50代会社員、長女高校生。
結婚後、夫の単独名義で自宅不動産を購入し、住宅ローンを組んでいましたが、
夫が自宅を出て別居し、協議離婚することになりました。
財産分与として、自宅不動産は妻である依頼者が取得して、
住宅ローンも依頼者が引き受けローンの借り換えをし、自宅不動産を確保することができました。
夫名義の自宅不動産に離婚後も安心して住み続けるためには、不動産の所有名義を移転させるだけでなく、
住宅ローンも適切に処理する必要があります。
自宅不動産をお持ちで離婚を考えておられる方は、是非、当事務所にご相談ください。
依頼者は40代公務員、妻は40代会社員。
結婚後、4,000万円で自宅マンションを夫婦共有名義で購入した際、
頭金400万円は依頼者の両親に資金援助してもらい、残金3,600万円は住宅ローンを組みました。
離婚時、自宅マンションは3,800万円で売却処分し、住宅ローン残金2,800万円を完済し、
余剰金1,000万円が残りました。
この余剰金を分配する際、依頼者両親の資金援助割合10%に相当する
380万円を依頼者の特有財産とした上で、残金620万円を折半する合意をしました。
その結果、不動産売却の余剰金1,000万円は、依頼者が690万円、妻が310万円を取得して精算しました。
自宅不動産の購入資金の一部が夫婦どちらかの親が援助している場合や結婚前から持っていたお金を充てた場合、その部分は特有財産となります。
不動産の価格が変動したり、住宅ローンの処理がある場合、特有財産の計算も複雑になりますので、このような場合は、当事務所までご相談ください。
依頼者は50代女性パート社員、夫は50代公務員。
調停離婚する際、夫の将来の退職金の財産分与が問題になりました。
当初、夫は、将来のことは不確定であると主張して退職金の財産分与を拒否していましたが、
最終的には、5年後の定年退職時に、500万円(この金額は、離婚時点の退職金額と結婚期間を考慮して
決めました)を財産分与する調停が成立しました。
将来の退職金も一定の場合には財産分与の対象になります。
ただし、離婚時点で現実にお金が入っておらず将来のことは不確定であることを考慮する必要があります。
実務上は、下記の方法があります。
熟年離婚で、夫が公務員や大企業の正社員の場合、夫の将来の退職金の財産分与は、
双方にとって重要なことですので、当事務所にご相談ください。